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『怪鳥以津真天現る』反省会
怪鳥以津真天現る』が自分でもすごくお気に入りになったので自画自賛反省会をしよう。

今日、山田洋次監督の映画『馬鹿が戦車でやって来る』を観た。
中盤まではノリがちょっと苦手で観てるのがしんどかったけど戦車が登場してからは目が離せなくなった。
感じたのは、この戦車は怪獣だということだ。
つまり、私にとっての怪獣観は『虐げられた者が抗議のために爆発的行動を起こしたもの』で確定したようだ。
この戦車は最後海に消えるのでまさに怪獣そのものだ。
だから、いま世界中で巻き起こっているブラックライブズマターのプロテスターたちも、いわば群衆型の怪獣なのだと言える。

私はバンプレスト的日本のヒーロー(ガンダム、仮面ライダー、ウルトラマン、戦隊、プリキュアなど)ではウルトラマンが好きだったんだけど、お話を描くのを通して怪獣への理解が深まるほど、好きではなくなってきた。
というか今はむしろヒーローは自分の敵なのではないかとすら感じるようになった。今回の怪鳥以津真天現るにおけるタケミカヅチを描くことを通して。

怪獣が好きだ。
怪獣への理解が深まった結果怪獣が好きになった。
水木しげるやクエンティン・タランティーノやギレルモ・デル・トロといった怪獣好きたちは、おそらく生来のものだ。水木しげるはゴジラになりたいあまりどうすればゴジラになれるのかを真剣に考えたという(うろ覚え)。つまり、怪獣に自己同一化する人々なのだと思う。
私はどうも、そのタイプではない。しかし、怪獣好きのメインストリームはそういう自己同一化系統だと思う。

なんにせよ私なりの道筋を経て怪獣が好きになった。
で、私自身は怪獣そのものではないんだけど、怪獣の側に立ってそれを応援したい。怪獣弁護士、怪獣使い、怪獣応援団の立場だ。
だから、今回のオオクニヌシがまさにそういうポジションだったので、非常に満足している。

今回のオオクニヌシ、複数の点で現時点での私にとっての理想のキャラになっていると感じる、
* やさしい
* 昔話に由来がある
* 怪獣使い
* 体制と対立する

私の描きたいシーンはいつも「困っている相手に優しくする」シーンだ。
美しいシーンの見本として念頭に置いているのが「笠地蔵でおじいさんが地蔵に笠をかぶせる」「鶴の恩返しで鶴を罠から助けてやる」であり、オオクニヌシがイナバノシロウサギを助けるという古事記でのシーンはこの系統のエピソードの日本における最初期の例のはずだ。もちろん世界中の神話に類型のあるシーンなので文字で記録される以前からあるものなのだろうが、日本において文字で残されたお話では最初期のもの(もしくは最初のもの)だろう。
つまりオオクニヌシは日本における「優しいキャラ」のルーツであると言える(と思う)。
今回のオオクニヌシも、怪鳥以津真天に同情して彼を手助けしている。優しいシーンなのだ。

私はよく昔話や神話を元ネタにする。
マンガでは説明事項が少なければ少ないほど良いと思っている。読みやすくなるので。なので、読者がすでに持っているであろう知識に乗っかれるように設定を作る。そうすると少ない説明で多くの情報を読者が理解してくれる。
で、日本の神話といえば共有度が高いし、パワフルな元ネタだ。神話なら世界的な普遍性がある(集合無意識の領域で理解が得られる可能性がある)ので、昔話を下敷きにする手法が発展すると神話に行き着くと思う。

怪獣使い。上記で書いたもの。

体制と対立する。
どうも私は、社会的な題材が好きらしい。
例えば映画を観て、悪役が登場する。その悪役が結局偏執的な個人の暴走に過ぎない場合、がっかりする。つまらない。
また、犯罪組織や悪の組織みたいなのが敵である場合もやはりイマイチだと感じる。悪役にするために作られたフィクションに過ぎないと感じる。
権力に結びついた現在の体制が悪であるという設定のとき、満足度が高い。作中で描かれる問題が現実に存在する問題と対応しているのを求めている。
なので、権力や体制と対立する存在が好きだ。
神話でいうと代表的なのが堕天使ルシファーだ。神に戦いを挑む。
で、オオクニヌシ。オオクニヌシはせっかく中つ国を支配してスクナヒコナと協力して国作りに励んで国内を整えたのに、その成果を天津神たちに横取りされる。国譲りのエピソードだ。
国譲りのくだりは国津神VS天津神の戦いであり、上からやってくる天津神が権力者であると言える。オオクニヌシも権力と戦う反体制的ポジションなのだ。


国津神たちのお話をもっと描けないだろうか。
現実世界に存在する社会的問題に注目し、それに対応する神話や妖怪などの象徴を探し、オオクニヌシたちに関わらせる。
昔描いた『フレンドプリキュア』での悪役も似たようなことをやっていたので私の得意なパターンではあるはずだ。
ブラックライブスマターもいわば怪獣だという解釈を得ているのでそれをそのまま発展させればマンガにならないかな。うーん。

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