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アニメ『ケムリクサ』感想
たつき監督の『ケムリクサ』を全話見たので感想を。つい感想や考察を書きたくなるところがたつき監督作品の特徴ですよね。
『けものフレンズ』は第一期は全話視聴済み、第二期は一話も見てないです。

ケムリクサで強く感じたのはけものフレンズと構造が驚くほど似てるということ。同じだと言っていい。
なので、ケモフレとケムリクサとの共通点を見出すことでたつき監督の作風の本質が見いだせる気がした。

似てると感じた点を列挙。


### 主人公が記憶喪失
主人公をかばんちゃんとわかばだとみなすなら、彼らは記憶がない状態でスタートする。
すぐに出会うことになる主要メンツ(サーバルちゃん/リンちゃんたち)はその世界の先輩だが彼女たちはその世界を詳しく説明できるだけの知識を持ってない。

### 謎解き構造
世界観に謎があり、お話が進むに連れて徐々に情報が開示されていく。
お話全体のクライマックスとは謎の核心の情報が開示されることである。

### のりものロードムービー
ケモフレではジャパリバスに乗って移動してく。
ケムリクサでは電車みたいなやつの車両に乗って移動していく。
箱型の乗り物が家として機能する。安心感のある拠点である。

### 序盤の強敵戦
ケモフレでは第一話のセルリアン戦。
ケムリクサでは橋を渡るときに遭遇するヌシ。
主人公の知恵で相手の注意を引く方法を見出し、注意を引いて隙を作り、攻撃力の高い仲間が攻撃して倒す。

### 最後の戦い
主人公のヒトが自己犠牲的に相棒を助けてピンチに陥る。
今まで遭遇してきた仲間たちが集結して力を合わせてラスボスを倒す。
主人公のヒトも無事。

### 敵は事故的存在であって悪意ではない
ケモフレのセルリアンはサンドスターが無機物に宿ることで登場する。なぜ襲ってくるのかはよくわからない。
ケムリクサのアカムシは本来無害な機械が赤いケムリクサに汚染されたもの。赤いケムリクサは事故的に生み出されたもので悪意はない。
つまりたつき監督の世界では悪は存在せず、敵は事故や謎によってもたらされる不具合である。


以後、私見。
たつき監督の作風、描きたいものの中央とはなにか、その願いとはなにかの考察。


### 正義についてのお話ではない
「悪」の存在しない世界なので、「何が悪で何が正義である」という作者の価値観は反映が避けられている。
なので社会的メッセージは動機としては絡んでこない。「主張のための作品」ではない。

### 「愛されたい」が動機ではないか
ケモフレではかばんちゃんがパーク内で唯一のヒトである。
ラッキービーストはお客様である人間にサービスするために作られた存在。
フレンズたちは本質的には「人間のための存在」ではないけど、パークは動物園をモデルにしていると考えられるのでパークを作った人間たちによって人間を楽しませるためとしてデザインされて配置された存在である。
つまり、かばんちゃんはかばんちゃんのための存在(かばんちゃんに尽くす存在)に囲まれている。

ケムリクサではわかばは地球にやってきた異星人みたいな超文明から派遣されてきた存在らしい。
判明している時間軸の最初では地球で拾った少女と暮らしてる。
この少女はわかばのことを好いている。
で、解決するべき困難の原因は彼女が作ることになるんだけど、その動機はもともと「わかばのため」である。意図に反して事故的にトラブルに発展してしまう。
で、わかばを助けるためにこの少女は自分をケムリクサ生物として分割し、分割された者たちがわかばと出会うという流れ。
つまり、本編においてわかばは自分のためを想うものに囲まれている。
* リンちゃんたちはわかばを想っていた少女の分割されたもの
* ルンバみたいなロボットは事故が起こる前からそもそもわかばに仕えていた召使い的存在
* 世界の脅威である赤霧やアカムシもわかばのために作られたものの失敗した姿

作中におけるたつき監督の位置をかばんちゃん/わかばだとみなすなら、その特徴は「その世界の中心で思慕を一身に集める存在」だということ。
解決すべき問題は不条理であったり事故であったりという「コントロール不可能な確率的ノイズ」であり、思想や立場の相容れない他者・競合相手ではない。

だから求められているのは以下のものではないか。
* 愛を受けること
* 安心(不運や不安を取り除くこと)



たつき監督の構造を真似してお話を作るとこんな感じじゃないかな。

主人公が目覚めると、巨大な屋敷の廃墟の中にいて、記憶がない。
メイドと出会う。メイドはご主人様を探しているという。
廃墟の出口目指して一緒に探検を開始する。メイドも記憶が完全ではなくこの屋敷について知識があるが不十分である。
途中、召使いロボットに出会い、このロボットは主人公を主人だとみなして尽くしてくれる。
屋敷内には攻撃してくる警備ロボット的存在がいて、これが主人公たちにとっての驚異となる。
序盤、強そうな警備ロボに遭遇する。主人公が注意を引き、メイドがやっつける。
道中、厨房係や掃除係や庭師など、屋敷に尽くす様々な職種の者たちと出会う。
話が進んでいくと、どうも主人公はこの屋敷の主人だったらしいことがわかる。
記憶を失った前後で姿が変化している。何らかの事故が起こり今の状態になったらしい。
メイドが探しているご主人さまとは主人公のことだったのだ!
この事故はメイドが主人公のことを想って何かを実行した結果起きてしまったものらしい。
警備ロボの暴走の原因を取り除くための最後の戦い。ふたりで挑み、主人公が自己犠牲的にピンチに陥り、それまでの道中で出会った仲間が集結して力を合わせてボスを倒す。
屋敷から脱出し、一味は自由な世界にともに出発していく。


たつき監督と同じ、または似たような構造を持つ過去の他の作者の作品、あったような… すぐには思いつかないが。

たつき監督構造でお話を作るときに工夫が必要だなと感じたのは、作中の仲間たちに昔から知られているはずの主人公がお話の核心に至るまではその過去を認知されないための工夫ですね。
ケモフレでは、過去に島にいた人間そのものではなくその名残である髪の毛がフレンズ化することでかばんちゃんが登場したというのがすぐには認知されないためのギミックになっている。
ケムリクサでは少女が自己を分割して記憶を封印したというのがそのギミックになっている。
なので変身とか記憶操作とかそういう仕掛けがたつき監督の今後の作品でも必ず絡んでくるんじゃないかな。


たつき監督の次回作が楽しみだ!
| マンガについての考えごと | 23:40 | - | - | permalink |
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