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次のシーン。
アウトライン。
■アメドリから神社まで歩く。この神社は池袋から歩いて20分くらいの熊野神社のイメージなんだよなあ。ドンキホーテの近く。
■移動中もガラクを買おうかどうか迷う。
■Twitterへのつぶやき ガラクを買うか迷っていること 神社に到着して巫女さんに思いを馳せるところ
■竜宮童子に会う。

ところで登場人物の名前ひとりも決めてない。

主人公の名前はいつものようにナカヨシでよい。苗字は? 「詩」を分解して言寺(ことでら)。
竜宮童子は人間ではないので姓名はいらず呼び名だけでいい。「幻想世界の住人たちIV 日本編」によると、竜宮童子の別名にシタリというのがあるらしい。シタリちゃん。ちょっと垢抜けない響きであるところが逆にそれっぽいかもしれない。シタリ。
ざっくばらん巫女。彼女は件の熊野神社の住人という設定になるだろう。しかし架空の存在なので、ここは神社の名前も変更して架空の場所にする。板橋区の熊野神社ということで板野神社という名前が思いついた。これにしよう。彼女の姓は板野。都合のいいことにグーグルマップで板野神社で検索してもその名前ズバリの神社はヒットしない。下の名前は? 巫女であってざっくばらんであってカードゲームプレイヤーであって… 「むせる」というキーワードを使う。決定。桐子(キリコ)。板野桐子。

仲良、シタリ、桐子。

じゃあ書こう。

***

ショップからアパートまで真っ直ぐ帰るのでは散歩として歩き足りなかったため、わたしは板野神社に寄り道することにした。

わたしは神社という場所が好きだ。だがその理由はフィクションからの影響である。エロゲなんかをプレイすると多くの場合神社が舞台として登場し、そこには必ずかわいい巫女さんがいる。わたしは巫女さんキャラを好きになることが多い。脳内で巫女さんキャラと神社とが結びついた結果、わたしは神社が好きなのだ。

アメドリから歩くこと約25分。板野神社にやってきた。
現実の神社というものは幻滅に満ちている。

[神社は美少女巫女さんを常駐させることを法律で義務化するべきだ もちろん黒髪の]
以前Twitterで書いたときもフォロワーさんたちから多くの賛同を得ることができた。これは国民の総意としての悲願であると言って良いということだ。

現実の神社には巫女さんはいない。いや、観光地の大きな神社には常駐巫女さんがいておみくじなんかを売ってるのかもしれない。地元の神社でも初詣で参拝にひとがたくさん来るときなんかは巫女さんがいることもあるだろう。しかし、近所の何でもない神社に美少女巫女さんが常駐していて箒で境内を掃き清めており、わたしを発見すると嬉しそうに手を振ってくれて、お茶でも出しましょうと言ってくれる、ということは残念ながら無い。

とても悲しい。

ひとが神社に求める要件は、その主要なポイントが巫女さんにあるとはいえ、別のものもある。
神社は出来れば俗世間から隔絶された山の上や森の中にあってほしい。緑に囲まれていて、自然に対して抱く崇敬の念が強化されるような場所であるのが良い。
他人の目に煩わされるような世間的な苦痛から解放された場所であるべきだ。

わたしの実家の近所にある神社であれば、山奥というほどには徹底していないとはいえ、巫女さん要素以外の神社らしさの合格ラインは満たしていた。その神社は、急な石段を登った先にあり、その高度の分だけ俗世間から解放される。後ろに林を背負っており、狭いとはいえ自然の中にあるお社なんだなあということは感じられる。

しかし、現在わたしがいるここ板野神社は、三大副都心のひとつである池袋の徒歩圏内にある神社だ。
俗世間からの隔絶感など到底期待できない。
まず、山も丘もないため、境内は俗世間と同じ高さに作られる。登るべき石段がない。
神社の敷地の外にはすぐに俗世間的な建物が建っている。それらの窓から神社の境内が見下ろせるわけで、他人の目から解放されるということがこの神聖な場所であるべき境内においては許されていない。
大体からして、この神社の神主?管理人?らしき者の自宅が神社の敷地内にある。これでは神社という場所が公の場所ではなくて私有地のようになってしまう。神社にいながらにして「ここ入っていいのかなあ」とビクビクしなくてはならない。


このように、都心の神社について憤懣は深刻な水準に達しているとはいえ、当面のわたしの関心は「原初の狩人・ガラク」にとどまっていた。

[いや でも 今回の基本セットってトークン生成しにくいからガラクがいると全然違ってくるんだよなあ]
iPhoneからツイートする。さっきからカードの話題しかツイートしてないな。

わたしのデッキはシンプルな戦略しか持たない。簡単に言うと、クリーチャーをたくさん並べて、「踏み荒らし」で総攻撃を掛け、対戦相手のライフを一気に削るというものだ。「踏み荒らし」というのは入手しやすい基本的な魔法カードで、場に出ている自分のクリーチャーすべてを一時的に強化する。いわば総攻撃必殺技みたいなカードだ。ただ、「踏み荒らし」で効果的に攻撃するにはあらかじめたくさんのクリーチャーを召喚しておかなくてはならない。
「原初の狩人・ガラク」は、一度場に出すと、場に出ている間は毎ターンそれ自体が新たなクリーチャーを召喚できるため、わたしの戦略にぴったりとハマるのである。

『ドラゴンエイジとヴァンキッシュ、買ったけど積みゲー状態だからこれ売ってカード資金にしようか… でもいつプレイしたくなるかわからんし… 一応両方とも4gamerのユーザーレビューで高得点を叩き出してる良ソフトのはずだしな…』
腕組みをしながら広くもない境内を曖昧な動きで歩きつつ、ぐるぐると考えていた。


「おじさま、欲しいものがあるの…?」

突然、声を掛けられた。
うろうろしている間からこの瞬間に至るまで、この発話の主たるべき他人の存在が視界には一切入っていなかったため不意打ちとなり、無様にびくっとなってしまった。

後ろを振り向く。誰もいない。
さらに視線を落とす。

そこにはおかっぱ頭の幼い女の子がいた。

『幼女…』

わたしの頭にとっさによぎったのは、幼女に話しかけられて嬉しいという当然の反応とは別に、自分のような無職のおっさん(まだ一応二十代だが)が幼女と話しているところを目撃されたら、怪しまれ、通報され、お縄を頂戴することになるに違いないという恐れだった。
わたしはむしろその恐怖で戦慄し、周囲を見回した。幸いなことに目撃者となるような人物は周囲にはいないようだが、ここは都心の神社である。無数に存在する、この場所を見下ろすことのできる窓のうち、どれかひとつに通報者の目が光っていないとは限らない。

「おじさま、欲しいものがあるんですか…?」
「わたしが欲しいものはこの世界の覇権ですが、目下のところは『原初の狩人・ガラク』が欲しいです。」

わたしを牢獄につなぐ引き金になり得るとはいえ、目の前の少女に直接の罪はない。わたしはしゃがみ、視線の高さを少女とそろえ、質問に返答した。
可愛らしい顔つきをしている。髪の毛はサラサラでぺたっとしていて、おかっぱ頭が和風ホラー映画にでも出てきそうな日本人形のように似合っている。
幼い女の子の可愛さというものは、わたしの仮説によると、無個性ゆえの可愛さではないだろうか。
人間は、年をとるに従って、最大公約数的な存在から細かく分岐していき、個性的な存在となっていく。当然、容姿にも個性が反映していく。
美醜で言えば、個性とは醜の要素ではないだろうか。
コンピューターで何十人だか何百人だかの顔を合成していきその平均点みたいな顔を算出すると、個性のない顔になり、それが美しい顔の典型とされる、とかそういう記事を以前どこかで読んだ気がする。
こどもというものは個性化以前の存在であり、上記のわたしの仮説に従えば醜の要素が発達していない段階である。
そういう美しさを感じる。

ところでこの少女、「おじさま」という単語を使った。育ちのいいお嬢様なのだろうか。
この神社の管理人の家の子だろうか。ご両親はそばにいるのだろうか。いるとするとかなりやばい気がする。

「おじさまが欲しいものって、このお札…?」
少女はそう言うと、空中から…
カードを取り出した。
テレビで手品師が目の前で物を取り出すトリックを行うのを見ると、核心的瞬間が隠されずに目の前で映像として展開されているのにも関わらず、モノが無の空間から発生するさまがよく認識できないということがある。
少女はそのように、何も無い空間からカードを取り出した。手品なのだろうが、やはりカードが出現する瞬間はわたしの認識の死角となる隙間に入り込んだようにうまく認識できなかった。

「これ、あげる…」
少女は取り出したカードをわたしに差し出した。

「見せてもらえるかな?」
とりあえず受領するかしないかを明確にはしない言葉で返答し、差し出されたカードを受け取った。
カードを確認すると、なんとそれは、紛れもなく、マジック・ザ・ギャザリングのカード「原初の狩人・ガラク」だった。

「これ、あげるから、つれてって…」
カードから目を上げると、少女の顔色はいつの間にか蒼白になっていた。
からだの芯もぐら付き、今にも倒れそうに見えた。
とっさに手を伸ばすと、まさに倒れ始めた少女のからだを受け止めることができた。

「大丈夫?」

声を掛けたが返事がない。ぐったりしている。
少女を抱き抱えているこの現場こそ、目撃されたら一発でアウトだ。わたしは今まで以上に必死に周囲を警戒してしまった。
しかし、少女の身を案じるよりもまっさきに自分の保身に意識が向かったことへの恥の意識が生じた。

『20代後半、無職、さらにこれで前科持ちになるな… わたしの後半生は試練に満ちているようだ…』

とりあえず一旦、警察組織に連行される恐れは度外視することにした。
目の前の少女の心配をしよう。

とりあえず少女を抱きかかえ、神社の建物の屋根の下に寝かせた。背負っていたDバッグに長袖のTシャツを入れていたので、それを枕としてあてがってやった。
以前、ホームヘルパー2級の講座で、「救急蘇生ABC」というのを教わった覚えがある。少女の状態が現状どのようになっているのか不明なので、今すぐ救急蘇生をするわけではなく状態確認からなのだが、たしかこの知識がこういうとき役立つはずだ。
Aは「air way」。気道の確保。仰向けに寝かせた場合、脱力した舌が口中で空気の通り道を塞ぎ、呼吸できなくしてしまうことがある。少女の顎を少し上げてやり、気道確保の姿勢にしてあげた。
Bは「breathing」。呼吸。呼吸が止まっている場合は人工呼吸を行えという教えだったはず。手を口にかざすと呼吸はしているのでその必要はない。
Cは「circulation」。循環。血液が体を循環しているか。要するに心臓が動いているかどうかということだ。心停止していれば心臓マッサージを行う。
脈は確か手首でとったはず。呼吸しているなら心臓も動いているとは思うのだが、介護職は一年でやめてしまったし、医療・介護の勉強を熱心にしていたわけではないので、わたしの知識は厳密ではない。覚えている限りのことはやったほうが良いだろう。
少女の手首に指を当ててむやみに脈を探していたところ、脈動する血管を見つけることができた。すると心臓は動いているということになる。

呼吸があり、心臓も動いている。転倒時に地面に倒れたわけでもないので外傷もない。
ぱっと見た感じではただ眠っているだけのようにも見える。
ただし、表情は眉にしわを寄せて、苦しんでいるようにも見える。
脱水症状かもしれないしくも膜下出血かもしれないしわたしの知らない持病持ちなのかもしれない。

彼女の保護者が近くにいるのであれば引き渡すことができるのだが、あいにく近くにはいないらしい。
救急車を呼ぶべきだろうか。
あるいは、先手を打ってわたしが警察を呼んで事情を説明し、彼女を保護してもらうべきだろうか。
神社の敷地内には管理人の家らしき住居もあるのだから、そこの住人に報告すべきかもしれない。

迷った挙句、119番をすることにし、iPhoneを取り出した。
ダイヤルを押す前に、深呼吸して、電話で伝えるべき内容を整理しようとした。現在地の説明の仕方、自分が確認できた範囲での少女の容態、転倒時の様子…

「その子、大丈夫?」

すぐ近くから女性の声で話しかけられた。
電話で言うべき内容を整理すべく集中していて、周囲への警戒を怠っていたため、接近に気づかなかったらしい。まあ、もしあらかじめ気づいていても逃げ出すわけにはいかなかったのだけれど。
見られたからにはわたしは通報されるだろう。前科持ちの家族を持つことになる実家の母や弟に申し訳ない気分になった。

だが当面の問題は倒れている少女であり、新たに登場した女性である。

「突然倒れてしまって。この子のお知り合いですか? 救急車を呼ぼうと思うんですが。」

顔を上げて返答しつつ女性の方を見た。
どこかで見た覚えがある。高校生ぐらいに見える。手には紙袋を持っている。買い物帰りなのだろうか。この紙袋もどこかで見覚えがある。

「あ、その子、よく見ると人間じゃないね。」

よく見ると人間じゃない。
人間でなければパッと見で判りそうなものなのだがどうなのだろう。

「わたしの目には人間だと映るんですがそうでないとするとなんなのでしょう。天使?」
「そうだね。近いね。神様だよ。」

ここは神社で、少女は神様。面白くなってきた。

「わたしはこの近所に住んでる言寺(ことでら)というものです。あなたは何者ですか。この少女についてご存知なんですか。」
「ああごめんごめん。あたしは板野桐子(きりこ)。そこ(といって彼女は神社の敷地内にある住居を指さした)に住んでる。この神社の管理人。高校二年生。その子はたぶん、何らかの神様だよ。霊感…というかカンで判るんだ。神様を病院連れていってもしょうがないよ。」

女子高生だ!
わたしは今幼女を介抱しながら女子高生と会話している。しかもここは神社である。これはなんてえろげだろう。
内心の興奮は頂点に達しようとしていたが、しかし、目下の問題を無視してしまうことはできない。大げさな解釈かもしれないが倒れている少女の生命の安全に関わることである。

「この子の正体は置いておくとして、わたしはこの子の今の状態が生命の危険につながらないかを危惧しています。」
「この子倒れたって言ってたけど、おじさ 言寺さん現場にいたの? どんなだった?」
「ええとわたしが神社の境内をうろうろしてたら突然話しかけられて、手品みたいにして空中からカードを取り出して、わたしにくれると言い、カードを受け取るとそのまま気絶するように倒れてしまいました。」
「ああだから言寺さん、そっちの手にマジックのカード持ってるんだね。」

言われてみて気づいた。少女から受け取ったカードを左手に持ったままだった。いろいろテンパっててしまうなり何なりするのを忘れていたらしい。iPhoneを手にしつつガラクのカードを指にはさんでいた。

「あ、『原初の狩人・ガラク』じゃん。さっきのお店で結局買った…訳じゃないんだね? ずっとにらめっこしてたようだけど。」

思い出した。この女子高生(キリコさんって言ったっけ)、アメドリで見かけた女性客だ。
「キリコさん」
「キリコでいいよ。なかなかむせる名前でしょ。」
「キリコ…さんはさっきアメドリにいましたね。」
「そ。マジック2012基本セットを5パック買ってきたんだ。キミはさっきガラクを眺めてたね。」
「よく覚えてますね。」
「いまどき下駄はいてるひとなんて珍しいからね。」

「言寺さんに聞きたいんだけど、この子、手品みたいにガラクのカードを取り出したって言ったよね?」
「催眠術だとか超スピードだとかのちゃちなものだったのかもしれませんがわたしの目には無から有を生み出したように見えました。」
「そのとき言寺さんはガラクのカードすごく欲しがってた?」
「わたしはガラクのカードを手に入れるだけのために生まれてきたと言っても過言ではないでしょう。」

「たぶんこの子はひとの願いを叶えてくれる神様だね。だからキミが欲しがってるものをくれた。すぐに倒れちゃったのは神通力が弱ってるから。科学が進歩して、このあたりは都市化も進んで、宗教なんかもどんどん衰退して、神様は弱っていく一方だからね。あたしの話信じてくれる?」
「信じます。」
「えっ 即答!? 簡単に信じてくれるとは思ってなかったのに。」

キリコさんと会話している間、寝ている少女の様子を観察していたが、容態は安定しているように見えた。これなら救急車を呼ばなくても命に別状は無いだろうという判断にわたし自身傾いていた。そのため、会話に臨む姿勢に余裕ができていた。

キリコさんの話す内容は非現実的だった。
にも関わらずわたしが「信じる」と即答したのには以下のような理由がある。
マンガやアニメや映画といったフィクションものの作品を見ると、非現実的な光景を目の当たりにした主人公がそれを認めたり信じたりするのを拒絶するシーンがよくある。目を血走らせて、「こんな事ありえない!」とか「これは夢だそうに決まってる!」とかのセリフを言う。
わたしはそういうシーンが大嫌いだ。なぜなら、それらの反応はテンプレートにはまったように一様で、バリエーションが無い。つまらない。しかもどうせ物語のそのあとの展開では、主人公はその現象を信じざるを得ないことになるのはわかりきっている。
そういうシーンを見る度、つねづね、「自分だったらそういうテンプレ的な反応は絶対しないね」と思い続けてきた。

そしてこの度の件である。
非現実的な説明をする少女が現れ、わたしに「信じてくれる?」と質問してきた。
ここで同意することを渋ってしまっては、わたしをイライラさせ続けてきたあのシーンを自分自身が主催することになってしまう。そんなことは許すわけにはいかない。
返答は瞬発力が大事だ。即答できたのは長年のイメージトレーニングの賜物だろうが、我ながらよくやったと快哉を叫びたい。

ただし、キリコさんの話を全部信じたかといえばまだそういうことではない。しかし、当面の間、彼女の話を信じたものとして事態の推移を見守ってもいいだろう。キリコさんの言っていることが何かの冗談であればそれはいずれ露見するだろうし、それが露見しないままで今回の件が一段落してもわたしが実害を被るわけではない。

「では救急車を呼ぶことはやめにします。とりあえずこの子が目覚めるまで見守っていることにしましょう。倒れる前、なにかわたしに言いかけていたようですし。」
「そうしてあげて。キミはなかなかむせる人物だね。」

むせる…?

「キリコさん、ところであなたはこの神社の管理人だと言ってましたね。」
「そうだよ。うちは代々そう。」
「それはあなたがこの神社の巫女さんだという解釈で妥当なのかな。」
「うーんまあそうだね。神様に奉仕する女性ってことだから。大したことやってないけどね。」
「すると巫女服を着ることもありますね。」
「普段は着ないよ。」
「この女の子はキリコさんの言葉によると神様だそうですね。」
「そうだね。八百万の神様の一柱…ひとりだね。」
「この子が目を覚ましたら、この子をどうすべきなのかキリコさんに相談したいのですが、お願いできますか。」
「うん、いいよ。あたしもそのつもりだし。」
「すると、この子が神様である以上、あなたとしては巫女としてこの子に接するということが言えますね。」
「うちの神社で起こってることだしね。」
「ということはあなたは巫女服を着なくてはなりません。衣服を整えるということは形式上のことではありますが、神仏への敬意を表現する重要な手段です。」
「言われてみれば… たしかにそうかも。」
「巫女服というものは大変素晴らしいものです。しかしそれは、アニメやゲームの世界では頻繁に見かけるものであっても、現実世界で目にすることはめったにありません。それは大変残念な事実だと言わなくてはなりません。もし、現実世界の神社において本物の巫女さんを目にする機会が増えれば、その価値は計り知れません。数多くの人間がそれに感謝し、神社へと足を運ぶようになるでしょう。そのことによって、人々が神を思う心は強化されるはずです。それはちからを失ったとされる八百万の神々にちからを取り戻させることにつながるのではないでしょうか。キリコさん、あなたは、是非、いますぐ、巫女服を着てくるべきです。神に奉仕する使命を帯びる者として。」
「そ、そこまで力説されると、すごいね。その気になってきたよ! よし! じゃあお望み通り着替えてくる! 待っててね。」

そう言うとキリコさんは小走りで建物の中に消えていった。

人間、不退転の決意を持って断固として説得に努力すれば、多くの困難を乗り越えて相手のこころを動かすことができるのかもしれない。

神様と言われた少女は不安げな表情を立てたまま寝息を立てていた。固いコンクリートの上に横たえられているのはかわいそうだ。キリコさんのうちに運びこんじゃ駄目なんだろうか。聞いてみるべきだった。


*****

とりあえずここまで。
現実的思考での独白中心の箇所から登場人物が増えて非日常的・非現実的要素が入り込んでくるあたりへの推移が難しいな。
まだどの登場人物も打ち解けてないが、会話になると書きやすくなってくる。
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